• 伊達雄亮

サステナブルな魚の食べ方を考える

[Science & Technology] [Universe]


近所にある東京都内のスーパーで魚売り場を見ると、ノルウェー産のサーモンやインドネシア産のマグロなど世界各国から魚が集まっていることが分かる。遠くから運ぶ行為によりここにたどり着いた魚介類を食すことは、消費者としてサステナブルな選択をできているのか?

The “Sustainable” food magazineの編集委員として都度考えさせられる。


これに対して、「近く、つまり日本で獲れたものだからといってサステナブルではない、別の指標も参照して判断したい」が私の考えだ。なぜ私がそう考えるかを日本の漁業の歴史と現状を踏まえてひも解いていく。


◆日本の漁獲資源の現状


漁業に関する取り組みを評価する指標として、SDGsゴール14に示されている「海の豊かさを守ろう」がある。

SDSN:Sustainable Development Solutions Networkとドイツのベルステルマン財団(Bertelsmann Stiftung)により2021年6月に出された国際レポートの評価では、日本は5段階評価で下から2番目「Major challenges remain (大きな課題が残っている)」だ。

<世界の漁業に関するSDGsの評価指標> 出展:The Sustainable Development Report 2021

※各国のSDGsに関する評価はこちらから見れます。

The Sustainable Development Report 2021:https://dashboards.sdgindex.org/map


「国産だから、サステナブルな魚」ということは、(もちろん地域や生産者によるのだが)残念ながら言えない状況だ。


水産庁 令和元年度 水産白書に記載された漁獲量を指標にみると、日本は1984年をピークに漁獲量は低下の一途をたどっている。2016年の生産量はピーク時の約1/3だ。内訳をみると、沿岸から離れた場所で魚を獲る、遠洋漁業 (下図、青色)と沖合漁業 (下図、橙色)による漁獲高が減った影響が大きい。

そして陸の近くで行う沿岸漁業 (下図、緑色)もピーク時から減少していることがわかる。

<日本の漁獲量の推移> 出展:水産庁 令和元年度 水産白書

それでは、世界の漁獲量はどうなのか?世界の漁業の状況をまとめているFAO(国際連合食糧農業機関)が発行する世界漁業白書 (2016)では、世界の漁獲量は増え続けている。

<世界の漁獲量>  出展:世界漁業白書(http://www.fao.org/japan/resources/jp/?user_extextender_option_list_1=4)

日本では遠洋、沖合、沿岸漁業すべてにおいて漁獲量の減少とともに漁業が厳しい状況にあるのに対し、世界的には漁業は成長している。

このギャップの要因のひとつは後述する適切な漁業資源管理にある。


◆なぜこうなったのか?


日本の漁業は1970年頃まで、戦後の食糧増産、動物性タンパク質の需要にこたえるべく漁場を国内から、遠洋にまで広げて発展してきた。漁船の大型化と、冷凍冷蔵技術の開発と相まって、魚を獲ることに関して日本は世界一の技術を持っていた。しかし、獲れる魚は無限に海に存在するわけではない。1982年に施法された国連海洋法条約では、排他的経済水域 (EEZ)が定められた。事実上、自国の領土から200海里 (約370km)内で漁業を行うことが定めらた。ここから世界の漁業は、“資源管理をしながら、魚を獲り続ける”方向にシフトした。日本は、この資源管理に適した漁業へのシフトが遅れていることがSDGsの指標に表れている※。

※詳細な議論には立ち入ることは控えるが、問題は漁業システム、文化、制度など問題は複雑である。


詳しく知りたい方は、下記文献がおすすめ。

“魚が食べられなくなる日、勝川俊雄著” https://www.shogakukan.co.jp/books/09825278


◆それでは、サステナブルな魚の選び方の基準は?


ここまでで、“国産”などのイメージで魚のサステナビリティは語れないこと、そしてサステナブルな魚の消費のキーワードは、“生産現場での適切な資源管理”であることを述べた。

しかし生産の裏側をスーパーの店頭からは覗けない。私たちはどんな基準で選択すればよいのか?


その一つに水産資源と環境に配慮し適切に管理された、持続可能な漁業で獲られたことをイギリス ロンドンにある非営利法人MSC (Marine Stewardship Council)が認証した商品に付けられるマークだ。こういった認証を受けた商品を選ぶことも一つの選択肢になりそうだ。こういった認証を受けている

<海のエコラベル MSC認証>  https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/3555.html

◆最後に


最初の話題に戻る。「消費者としてサステナブルな選択とは何だろうか?」

イメージで選択することではなく、生産の裏側を知ることでより現実的な判断ができそうだ。しかし流通が世界規模となり生産者の顔が見えない現在、これを見える化する仕組みも大規模になる。認証を得るためにコストがかかり、それが販売価格にのしかかる現実があることも認識しておかなければならない。そして資源管理は、魚を獲ることを制限する場面もある。水産業に関わる方にとって商いの源である漁獲量の制限は生活にかかわる問題だ。


原稿入稿時期が迫っていた本日昼、再びスーパーの魚売り場に足を運んだ。綺麗に並べられた魚介類を眺める。「魚を育てた海、獲った漁師さん、ここまで運んでくれた運送業者の方など...」この場に届くまでのストーリーは直接見えない。私がここでできることは、この場に届くまでを想像して今日食べるものを選択すること。想像した結果、そうしない場合と選択は変わらないかもしれない。しかし、自身の選択を見直すことが、サステナブルな魚の食べ方を考える最初の一歩だろう。